Mechanics of pole vaulting:棒高跳を”モデル化”する
棒高跳に関する研究について!
これまで多くの研究によってテーマにされてきましたが、特に力学的な手法を用いて分析を行い、跳躍を理解しようとする試みが多くみられます。
そこで2010年に発表された「Mechanics of pole vaulting : a review」(Frere et al., 2010)を参考に、”棒高跳と力学”について見ていきます。
【モデル化する】
そもそも「モデル化」とは「単純化(シンプルにする)」だと考えていただけるとわかりやすいです。様々な要素が組み合わさる棒高跳を理解するために、全体をどうにかして「単純にして」分析する必要があります。
棒高跳に関する力学的研究において跳躍をどのようにモデル化(単純化)するのかで、見えてくることが異なります。すなわち、”どうやってモデル化する”のかは、研究の結果を左右する1つ非常に重要なポイントになります。
これまでに行われてきたモデル化について代表的な4つを紹介します。
①ヘイモデル(Hay, 1980)
とても基本的。高さを4つに分けたもの。
H1:踏切時の競技者の重心高
H2:ポール伸展時の競技者の重心高
H3:突き放し時の競技者の重心高
H4:最大重心高とバーとの差
跳躍高を決定する”高さ”という要素を評価することが出来ます。
一方で、水平・垂直速度やその他あらゆるキネマティクス分析が不可能という欠点があります。
(キネマティクス=変位や速度、加速度を扱います。例えば、助走速度や踏切角度、ポールの湾曲率など)
ヘイモデルは棒高跳以外の種目も存在します!有名人です。
②旧モデル(Angulo Kinzler et al., 1994)
1992年バルセロナオリンピックの分析にて用いられた。
跳躍全体を4つに分けたもの。
Ⅰ:助走
Ⅱ:踏切
Ⅲ:ポール支持局面(踏切後~ポール伸展)
Ⅳ:空中局面(突き放し~クリア)
これによって、力学分析が大きく進歩します。
一方で、競技者とポールの間で起こる相互作用や得られた力学的な変数とパフォーマンスとの関係については分析できませんでした。
③エネルギー注目型モデル(Schade et al., 2000)
2000年シドニーオリンピックごろから用いられ始めた。
踏切後を2つに分けたもの。
Ⅰ:踏切接地~最大ポール湾曲
Ⅱ:最大ポール湾曲~最大重心高到達
競技者とポールの間で起こるエネルギーの受け渡しを分析することが可能になりました。
Ⅰでは助走で得られた運動エネルギーがポールに蓄えられ、Ⅱではポールに蓄えられたエネルギーが、再び競技者に戻ってきます。
またこのモデルにより、男女の跳躍パターンの違いも見つけられました!!
④最新モデル
そして現在は「②と③をコラボレーション」した、良いとこ取りモデルが提案されています。
跳躍全体を4つに分けたもの。
Ⅰ:助走
Ⅱ:踏切足接地~踏切離地
Ⅲ:ポール湾曲局面(踏切後~最大ポール湾曲)
Ⅳ:ポール伸展局面(最大ポール湾曲~最大重心高到達)
先行研究の良い所を上手く寄せ集めたこのモデルにより、棒高跳をより理解することに繋がりました。現在の棒高跳をテーマにした力学的研究においては主に④最新モデルを用いて行われます。
いかに棒高跳を理解するか。その手掛かりを「モデル化」によって垣間見ることが出来ます。
これから力学的手法を用いた先行研究から、これまでに示されてきた”棒高跳”について紹介していきます!!
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