もうハムストリングスの肉離れはしたくない・・・効果的な予防法とは?(2-1) ~ハムストリングスを知る~

みなさんお久しぶりです.筑波大学の川間です.

前回の投稿からかなり時間が空いてしまいました…

楽しみに待っていただいていた方,どうぞ陸上界の冨樫とお呼びください.


さて,前回の記事では肉離れの要因についてお話をしました.

その中で,肉離れの予防にはトレーニングによって筋力を向上させることが有効であると述べました.


そこで,今回は『肉離れの効果的な予防法』の第2話として

「ハムストリングス各筋の特徴とその強化方法」について3部構成でお話します.

(1話で書く予定でしたが,気づいたら大作になってしまいました...笑)


【ハムストリングス各筋の特徴】

肉離れを予防するためにはまず,ハムストリングスとは何か?をよく理解する必要があります.

ハムストリングスは大腿二頭筋長頭,大腿二頭筋短頭,半腱様筋半膜様筋の4つの筋から構成されています.大腿二頭筋短頭は膝関節のみに付着し膝関節屈曲のみに作用するのに対して,他の3筋は膝関節と股関節に付着している二関節筋であることから膝関節屈曲と股関節伸展に作用します.

二関節筋はスポーツパフォーマンスや傷害と強く結びついていることから,これら筋の形や振る舞いを理解することは重要です.


1) 大腿二頭筋長頭,半膜様筋

これらの筋は半腱様筋と比較して筋の長さが短い一方で,大きな筋断面積を有しています.


一般的に,筋の長さは収縮速度ポテンシャルを,筋の大きさは力の発揮ポテンシャルを表しています.なので,これらの筋は収縮速度の生成には向かないけれども,大きな力の生成に大きく貢献しています.


ウェイトリフティングや疾走の加速局面など…

大きな力発揮を必要とする競技種目は重要な筋であるかもしれないですね.

大腿二頭筋長頭,半膜様筋に関して以下のことが報告されています.

・ ハムストリングスの肉離れの69%は大腿二頭筋長頭で最も発生する (Woodley & Mercer. 2004)

・ 高速度の中で動作を行うスプリントタイプ (e.g.. 陸上競技短距離走選手) は大腿二頭筋長頭,筋の過度な伸張を伴うストレッチングタイプ (e.g.. バレエダンサーやハードル選手) は半膜様筋で肉離れが多い(Askling et al., 2007, 2013, 2014)

・ 両筋ともに肉離れはお尻付近 (近位部) で好発する (Askling et al., 2007; Smet & Best, 2000)


これらの報告から,大腿二頭筋および半膜様筋は力の生成に優れている一方で,肉離れを発生しやすい筋であると言えます.

特に肉離れは近位部で多く発生することから,近位部を強化することは肉離れの予防に

大きく寄与するかもしれません.


2) 半腱様筋

この筋は上記2筋よりも筋断面積が小さい一方で,筋の長さがハムストリングスの中で最も長いと言われています.ゆえに,大きな力発揮は苦手だけど,速い動きを作り出すことに大きく寄与しています.

半腱様筋に関して以下のことが報告されています.

・ 疾走中の脚スイング動作に大きく貢献している (Higashihara et al., 2010)

・ 一般人と比較して,筋サイズが下肢の筋,全ての中で最も大きいこと

(一般人よりも54%大きい; Knaus et al., 2015)

・ 同一筋内の中でも特に近位部で筋が発達していること (上野 ほか,2018)


これらの報告を考慮して,ハムストリングスの中でも半腱様筋は疾走動作と強く関連しており,特に近位部が大きく貢献している可能性があります.


【2-1のまとめ】

以上,ハムストリングスは各筋で特徴を述べましたが,肉離れのしやすさやパフォーマンスへの貢献度などは各筋で異なることがわかります.これらの特徴を考慮して,トレーニングにより各筋および各部位を選択的に強化することで傷害予防やパフォーマンスの向上をより効果的に実現できるかもしれません!!


「いやいや川間さんよぉ…どうやって各筋を強化するのよ…」


そんな声が京田辺の方から聞こえてきます.

次の記事でじ~っくり説明しますので,ぜひご覧ください!

明日から使えるヒントがたくさん隠れているかも…?


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