高く跳ぶ選手は、どこが違う?女子ボウルターにおける各局面の所要時間に注目して分析してみた結果

皆さん、こんにちは。

NPO法人ボウタカの青柳です。


今回は下記の論文を紹介したいと思います。

「Selected time space characteristics in female pole vault」(Krska Peter, et al. (2023))


「女子選手のうち、記録の高い選手と低い選手では、いつ違いがあるのか?」


という疑問に、局面の所要時間と重心上昇量を手がかりとして答えてくれる論文です。

では、内容を見ていきましょう。


【方法】

この研究では、チェコ共和国で開催された競技会に出場した女子棒高跳選手19名(記録:3.80m〜4.83m)を対象としています。


これらの選手を、記録の高いグループ(S2:4.40m〜4.83m)10名と記録の低いグループ(S1:3.80m〜4.30m)9名に分けました。

棒高跳における8つの技術局面(フェーズ)を対象に、時間(秒)と重心の上下移動量(cm)を測定しています。



【結果および考察】

結果をまとめると以下のような点が明らかになりました!


1. 重心(CGv)の上昇傾向は両グループに共通

両グループともに、跳躍の各フェーズで重心が段階的に上昇する傾向は同じでした。


しかし、記録の高いグループはすべてのフェーズでより高い位置に重心があり、その差は累積して大きくなっていました。


2. ジャンプ初期(Take-off)では体格の影響も

踏切終了時の重心の高さは、低記録のグループが106.0 cm、高記録のグループが110.6 cmでした。


これは、高記録のグループの選手がやや身長が高い可能性があるため、技術だけでなく体格の影響も含まれていることが考えられます。



3. 技術的な差は後半フェーズに顕著

特に以下のフェーズで高記録のグループの技術的に優位であること(重心の鉛直方向への上昇量がより大きいこと)が見られました。


特に後半の「Lifting(引き上げ後半)」「Bar crossing(クリア)」の技術が高記録のグループが高く跳んでいる要因とされています。



4. 時間の使い方にも差がある

高記録のグループは「Hanging(踏切=スイング前)」フェーズが0.02秒長く、ポールのしなりを最大限に活かしていました。


「Lifting(引き上げ後半)」フェーズを0.07秒長く使って、重心をより高く持ち上げる時間を確保していました。


この「時間の使い方の差」が、跳躍パフォーマンスに大きく影響していると考えられます。

引用:Krska Peter et.all(2023)



【まとめ】

今回の論文から、大きく以下の2点の示唆をえられました。

① 棒高跳において高い記録を出すには、後半フェーズの技術力(ポールの反発を活かす・タイミングよく体を持ち上げる)が特に重要!

② また、助走や踏切だけではなく、空中で「棒をどう使うか」が勝敗を分けるポイント。


追記すると、今回の研究における高記録グループは4.40m〜4.83mの女子選手となります。


そのため、特に女子選手の4.40m以上の記録に到達するには、助走や踏切の技術はもちろんのこと、ポールを曲げてから”ポールの反発を活かして”跳躍をする技術の習熟が重要であることが考えられます!言い換えると、空中での身体のコントロールが必要になると思います。


より垂直方向に身体が上昇するために、皆さんはどのようなトレーニングをしていますか?


この論文を読む時は、技術的な手がかりを得るために「時間の長さ」に加え「どれだけ重心が上がったか」の両方を比較することで、記録が高いグループと低いグループにおける違いを見出しています。技術を追求する際には注意しなければなりません。


また、研究を活用する際には、常に研究の限界に関する考慮が必要です。

(細かい方法が書いていないので分かりませんが、方法に欠点があった可能性もあることは頭に入れておきましょう)


科学知と実践知のどちらも大事に練習していきましょう!

是非、参考にしてみてください!


(文責:青柳唯)


【参考文献】

・Krska Peter, Ruzbarsky Pavel, Sedlacek Jaromir, Zvonar Martin(2023) Selected time space characteristics in female pole vault. FiEP BuLLETIN online,Volume93:(1) 455-464.

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