【早生まれは不利?】棒高跳にも相対年齢効果がある??
ボウタカチャンネルをご覧の皆さん、こんにちは。
国際武道大学の村山凌一です。
以前の記事で、「ジュニア期のパフォーマンスを評価するときは、相対年齢効果に注意すべき」という話をしました。
「同じ学年でも、1歳になったばかりの子どもと、1歳になってから11ヶ月が経過した子どもとでは成長の進み方が異なり、その影響がスポーツパフォーマンスにも現れている。ただし、将来にわたってその効果が続くわけではない。」
といった内容です。
このような現象は「相対年齢効果(Relative Age Effect, RAE)」として知られており、スポーツ競技以外にもさまざまな影響を及ぼすことが報告されています。
今回は、棒高跳でも相対年齢効果が生じているのかを検討した最新の研究を紹介したいと思います。
棒高跳でも相対年齢効果が影響しているのか?
「Mitigating against relative age effects in youth Track & Field: Validating corrective adjustment procedures across multiple events」(「陸上競技のジュニア世代における相対年齢効果の緩和:複数の種目にわたる補正手法の検証」)
これは、イタリア・トリノ大学の研究者 Paolo Riccardo Brustio 博士らが2024年に発表した論文になります。
この論文では、イタリアの陸上競技データベースに登録されている棒高跳選手の各年齢時点のパフォーマンスと生まれ月を分析しています。
研究の分析方法と結果
この研究では、対象となる選手を4つのグループに分類しました。
※イタリアでは1月1日から12月31日が同じ学年として扱われています。
- 1月〜3月生まれ
- 4月〜6月生まれ
- 7月〜9月生まれ
- 10月〜12月生まれ
その後、選手たちの年齢ごとの生まれ月の割合を全体と、持ち記録の上位10%の対象者の中で検討したものになります。結果は以下の表のとおりです。
棒高跳選手全体の傾向
まず、全体の傾向を調べた結果、1〜3月生まれの選手が多く、10〜12月生まれの選手が少ないことが分かりました。
これは、相対年齢効果によって、早生まれの選手が競技に参加しやすい傾向があることが考えられます。
記録上位者(トップ10%)の分析
さらに、各年齢の記録上位10%の選手に注目すると、この傾向はより顕著になりました。
つまり、競技レベルが上がるほど、1〜3月生まれの選手がより多くなるという結果です。
相対年齢効果の影響は補正可能か?
論文では、相対年齢効果を補正する方法についても検討されています。
例えば、14.0歳の選手と14.9歳の選手では、実際には0.9歳(約11ヶ月)の年齢差があります。
この差を考慮し、記録に補正を加えると、相対年齢効果がほぼ消失することが示されました。
このことから論文では、適切な補正を行えば、公平な評価が可能であることを結論付けています。
しかし、裏を返すと、生まれ月によって競技記録に影響が出る可能性を結論付けたと解釈もできます。
まとめ
- 棒高跳においても相対年齢効果が確認されており、1〜3月生まれの選手が競技に残りやすい傾向がある
- 記録上位の選手では、この傾向がさらに顕著になる
- 相対年齢効果を補正することで、生まれ月による競技成績の差を緩和できる可能性がある
この研究の優れた点は、これまで明らかにされてきたトップレベルの子どもたちに認められた相対年齢効果を確認したことはもちろんのこと、トップレベルでなくとも、全体の傾向として、早期に生まれてきたの競技成績が高いことを示したことにあります。
また、棒高跳のような技術の比重が高い種目においても相対年齢効果が認められたことは、単純な身体成熟以外の要因が関係している可能性も考えられます。
ただし、相対年齢効果はシニア期には消滅することから、適切な評価をしながら、ダイヤの原石を見落とさない工夫が必要ですね。
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