コーチングの一般理論について(中編)
前編にて、コーチングの目的やスタイルについて紹介しました。
今回はコーチが目指すダブルゴールを達成するための、「指導行動」と「育成行動」について詳しく見ていきましょう。
【おさらい】
指導行動・・・競技力の向上を目的としたコーチング行動
育成行動・・・人間力の向上を目的としたコーチング行動
そして、コーチは競技者の「競技力」と「人間力」の向上(ダブルゴール)を目指してコーチング行動を行います。
【指導行動について】
指導行動では、競技者の”競技力”向上を目指した取り組みを行います。棒高跳における競技力向上は「より高いバーを越えること」、「大会でよりよい成績を残すこと」と言えるでしょう。
この目的を達成するためにコーチは、競技者の未来を創造的に設計し実現できることが求められます。このような創造×設計型トレーニングを実践するスキルが、指導行動の原動力となります。
そして、トレーニングを効果的に推進していくためには、創造・設計型トレーニングサイクルの循環モデル(図子のトレーニングサイクルモデル)が有効です。
トレーニングサイクルを循環させるために・・・
①専門とする種目(棒高跳)のパフォーマンス構造を理解すること
皆さんも知っているように、スポーツパフォーマンスは単純ではありません!
多数の要因が複雑に錯綜し合い、そして相互に関係しあった複雑な構造をしています。
例)棒高跳
「ポールを持って走る・踏み切る・ポールを使ってバーを越える」
とザクッと簡単に説明はできますが、実際は一言では説明できないほどに複雑な運動です。
ここではHayの示した、棒高跳の記録を決定する要因を示しますが、このモデルでは到底説明できないほどに複雑です・・・。
筋力をつければすぐに跳べるのかというと、身体のバランスが崩れて跳べなくなることもあります。ポールを長くすれば跳べるのかというと、操作が上手くいかずに跳べなくなることもあります。
1つの技術の変更は、その変更が他の技術に影響し、全体の動きを崩すこともよく起こります。
この複雑性に対応するためにも、「創造」作業、すなわち計画・実践・省察を循環させ続ける“創造”的な方略が求められます。
②PDCAサイクルを回す
Plan(計画):
これまでを分析し、未来を見据えた「目標」を設定しましょう。
そして、目標と現状のギャップを理解し、これを解決すべき「課題」とします。次に、課題を解決するための「方法と手段」を設定していきます。この時、今ある方法と手段では解決不可能だと判断できた場合は、新しい方法と手段を”創造”することが求められます。
ここまでできれば、トレーニング計画の立案です。トレーニングに充てられる時間とペリオタイゼーション理論を考慮して計画を立てましょう。
※トレーニングの手段と方法に万能薬はありません!いろんな手段と方法を試し、組み合わせましょう!!
Do(実践):
計画に応じて、トレーニングを実践します。
Check・Act(省察):
競技の結果や日々のトレーニングの記録を手掛かりに、これまでのトレーニングを振り返ります。この時に、日々のトレーニング日誌を書き残すことが役に立ちます。
(ちなみに僕は中学1年生の頃から12年間の日誌があります。)
種目について理解し、PDCAサイクルを回していくことで、トレーニングを効果的に進めていくことが可能になります。
【育成行動について】
育成行動では、競技者の”人間力”向上を目指した取り組みを行います。人間力の向上となると、簡単には説明することが出来ませんが、ここでは特に「誉める」と「叱る」という行動を取り上げてみます。
「誉める」:競技者に自信と勇気を促す一方で、甘えの増長と自身の思考・判断を停止させる効果を持ちます。
「叱る」:反省・努力・改善を促しエラー修正に貢献する一方で、畏縮やモチベーションを低下させる効果を持ちます。
つまり両者はアクセル(誉める)とブレーキ(叱る)の関係にあると考えることが出来ます。
コーチが進んでほしい方向へと競技者が向かっておらず、軌道修正が必要な場合に「叱る」行動が効果を発揮します。
育成行動は競技者やチームとの関係を考慮し行うべきでしょう。
ここまで、コーチングにおける指導行動と育成行動について、詳しく紹介しました。
特に指導行動についてはスポーツをコーチングする、コーチ特有の知識・経験・スキルが必要となります。各コーチの皆さんが日々学び、協力することが重要だと感じています。
次回は後編!!
コーチングのための行動と関連する学問について紹介します!!
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