「腹筋を行うことにより腰痛が悪化する?(前編)」

あけましておめでとうございます、榎です。

最近忙しくて投稿が滞っておりました・・・

博士論文が佳境に差し掛かり、少しずつゴールが見えて参りました。


私の近況はさておき、早速、今回の内容に入っていきます。

「体幹」を専門に、大学院で研究を行い、またストレングスコーチの国際資格を持っている私から、「体幹」のメカニズムからトレーニングへの実践について紹介していきたいと思います。


今回の内容はとてもボリューミーなので「前編・中編・後編」に分けてご紹介しますね!


【棒高跳選手には「腰痛」が多い!】


いつかの記事でも棒高跳選手に腰痛が多いことを紹介しました。

ここで簡単に、ポイントをおさらいします!


  • 大学生の棒高跳選手において腰(腰椎/下背部)に最も傷害が発生していたことが研究で報告されている1、2)。
  • 我々が行った1年間の傷害調査において、大学生の棒高跳選手と混成男子選手の約半数(55.6%)に腰痛が発生した3)。
  • 研究に参加した大学生男子棒高跳選手20名の全員が練習を休むような腰痛を経験していた4)。


このように棒高跳選手において腰痛が問題となっていることが分かります。


私自身も高校生時から腰痛に悩まされていました。

治療のために病院や接骨院など通っていましたが、多くの人に言われたのは「腹筋と背筋をして体幹を鍛えなさい」でした。


【腹筋をやるだけでは腰痛は改善しなかった】


そのため当時は、腰痛を改善するために毎日2,000回の腹筋をやっていました(笑)

このように腰痛があって「腹筋をやりましょう」と言われたことがある人は多いんじゃないでしょうか?



しかし、僕の腰痛は一向に改善しませんでした・・・

逆に、 (正しい方法ではない)腹筋を行うことによって腰痛が悪化していたことが考えられます。


経験談を交えながら、「体幹」のメカニズムを紹介していきます。


【体幹は様々な筋の集合体!】


まず多くの場面で、「体幹」と一括りにしている体幹ですが、実は体幹は様々な筋肉で構成されています。


みんなが大好きなシックスパックと言われる「腹直筋」や背骨の隣を上下に走っている「脊柱起立筋」なんかは、知っている方も多いと思います。

さらに、よく「インナーマッスル」が大事だよねとかいいますよね!


では、果たしてどんな筋肉がインナーマッスルでアウターマッスルなのでしょうか?


Bergmark5)は、体幹を構成する筋にはローカル筋(local muscle、インナーマッスル)とグローバル筋(global muscle、アウターマッスル)が存在するとしています。


例)

ローカル筋 

(local muscle;インナーマッスル)

→ 多裂筋、腹横筋、棘間筋 etc.


グローバル筋 

(global muscle;アウターマッスル)

→ 腹直筋、脊柱起立筋、腰方形筋(外側繊維) etc.


ここで、体幹トレーニングを行う際に、よく「インナーマッスル(ローカル筋; local muscle)」が注目されます。その理由はなぜなのでしょうか?


それぞれの筋の役割を簡単に表現すると


ローカル筋(local muscle;インナーマッスル) = 体幹を安定させる土台
グローバル筋(global muscle;アウターマッスル) = 力を出して攻めていく


【「強い体幹」とは?】


体幹を安定させる(強くする)ということは、体幹部で“代償動作をしない”ということを意味します。

代償動作というのは、例えば足をあげる時に、姿勢を維持できずに腰を曲げるような動作を指します。


体幹が安定しない人は、足を高く上げようとすると、体幹部の姿勢を維持できず、腰椎を曲げることで、足をあげます。



つまり体幹において、背骨(腰椎)を安定させることが重要なポイントになります。


ここで、グローバル筋のみでは脊柱は安定しません。

グローバル筋のみを使った場合には、1番強度の弱い部位に負荷が集中し、腰椎分離症や椎間板変性(ヘルニアなど)を引き起こす原因になることが考えられています。



グローバル筋のみを鍛えていると体幹は安定せず、逆に腰痛を悪化させてしまうことが考えられるのです!


中編へ続く!(中編は、1月27日に公開予定)






<参考文献>


1. Rebella G. A prospective study of injury patterns in collegiate pole vaulters. Am J Sports Med. 2015;43(4):808-815.


2. 榎将太, 倉持梨恵子, 村田祐樹, 清水卓也. 大学生棒高跳選手の障害発生に関する前向き調査. 日本臨床スポーツ医学会誌. 2018;26(2):222-229.


3. Enoki S, Kuramochi R, Murata Y, Tokutake G, Sakamoto T, Shimizu T. Internal risk factors for low back pain in pole vaulters and decathletes: A prospective study. Orthopaedic Journal of Sports Medicine. Acceptance.


4. Enoki S, Kuramochi R, Murata Y, Tokutake G, Shimizu T. The relationships between chronic low back pain and physical factors in collegiate pole vaulters: A cross-sectional study. Int J Sports Phys Ther. 2020;15(4):537-547.


5. Bergmark A. Stability of the lumbar spine. Acta Orthop Scand. 2009;60(sup230):1-54.

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