【助走】高く跳ぶためのポール保持(ポール降ろし)とは?
『The Active Pole Drop』
--- "The Pole Vault -A Violent Ballet", p.36より
竹ポールやスチールポール時代に遡ると、選手はポールの上から3フィート(約90㎝)のあたりで保持していたため、選手は助走中にポールとのバランスをとることが出来ていました。このとき、ポールの先端は目線か、それよりも低くしていました。
1950~60年代にかけて、ファイバーグラスポールが登場し、選手はポールの端に近い位置を保持するようになり、ブブカにより完全な技術の変化が起きました。
(ブブカのコーチとして有名な)ペトロフコーチは、青年だったころ、彼のコーチが第2次世界大戦から帰還した時に、この技術の変化を思いつきました。彼のコーチは戦いの末に片腕を失っていましたが、それでも棒高跳をしたいと思っていました。
彼のコーチはポールを片手で持ち、肩に沿わせるように垂直に立て、バランスを取りながら助走を行いました。加速したところで、ポールを肩から離しボックスに向けて降ろしました。ポールの先端が目線を超えたタイミングで、片腕を空に向けて伸ばし、突込みを行い、バーをクリアしました。
この彼のコーチが行った ”one arm pole drop”から、ペトロフコーチはブブカにこの棒高跳界における革新的な技術を教えたのでした。
”The Active Pole Drop”は、選手が姿勢よく、より速く走るために生み出された技術です。そしてこの技術は、ポールを単なるファイバーグラスの重りとしてではなく、重さのない、むしろ加速のための用具として使うためのものです。
私たちはこれまでに多くの選手が”The Active Pole Drop”を用いて勝利する姿を見てきました。全ての選手は共通して「速く走る、ポールの先端を高く保持する、長くて硬いポール(Big Stick)を使う」と言っています。これらが成功への鍵になります。
しかし、ポールの重さを感じない保持、ポールを保持しても助走に影響を与えない保持、つまりバランスが取れ、さらに棒高跳の技術を遂行するためのリラックスができていなければ、あなたは"Big Stick"を使うことはできません。
The Active Pole Dropは、助走の開始時にポールが地面に対して70度の角度であるところからスタートします。重要な点は、ポールが体の一部となることです。下の手(右利きの選手の場合の左手)にポールの重さがかからないようにします(下の手でポールを支えなくても、保持が出来る状態)。
ポールの重さは上の手(右利きの選手の場合の右手)にかかっています。選手が助走を開始し、加速をし、加速が出来たときに、助走のリズムに合わせながら、ポールの先を降ろします。踏切から6~8歩前の時に、ポールは35~45度になります。
徐々に降りてくるポールの先端を追い越そうとしながら走ります(この時、先端に引っ張られる、先端についていくだと弱いです)。そしてボックスにポールを突っ込む前に踏み切ります。実際には、突込みと踏み切りはほぼ同時になり、Free Takeoffをします。
The Active Pole Dropは、リズムの中での体の動き、ポールが体の一部として動く点から、ダンスと比較することが出来ます。この加速するポール降ろしは、身体を前進させ、突込み時により身体が伸びあがることに繋がります。ポールの重さを感じないことで、より高い角度に向かって踏み切ることが出来ます。
アメリカで偉大な元選手で、現在コーチをしているPat Mansonは「もし選手が電柱か爪楊枝を保持するなら、このことは考えても仕方ない。ポールを正しく保持することが出来れば、ポールの重さは無くなり、選手は速く走ることが出来る」と言っていました。
ポールを降ろすタイミングと、「ポールを感じること」は助走路ではなく、トラックで習得できます。私たちは、片手でのポール降ろしや、片手でのポール降ろしから両手で突っ込む動き、また狭いグリップ幅でのポール降ろしの練習をします。狭いグリップ幅での練習は、選手がポールが降りる動きを操作しようとすることを防ぎます。
選手がポールの先端を追いかけることで助走が速くなり、さらに加速ししっかりと踏み切れるようになることが、この練習の狙いです。The Active Pole Dropの練習は簡単ではありません。この技術は何度も何度も練習する中で上達させるしかありません。
ポールをある一定の角度に傾けたまま保持するような、ポールが動かないようなポール保持は、棒高跳においては、旧式の、時代遅れの方法です。
ポールを傾けたままの助走は、予期しない力みを生み、姿勢を崩し、それによって正確に、また自在に助走を行うことができなくなります。つまり、ポールを傾けたまま助走をすることは可能ですが、それはあなた自身で自分の可能性を潰しているということです。
要するに、The Active Pole Dropは、ポールを傾けたまま助走するよりもはるかに良い方法です。正しい姿勢でリラックスしている選手は、(ポールを傾けている選手の特徴)助走が乱れ、姿勢が崩れ、ステップが重心の位置からずれている、そして接地が上手くできていない選手に比べて速く走ることが出来ます。
また、狭いグリップ幅は、広いグリップ幅に比べると、狭いグリップ幅の方が両手をより垂直に伸ばせることから有効です。
高く跳びたければ、ポールは必ず選手と一体とならなければいけません。
完ぺきな跳躍をするために練習では、それは美しく、バランスが取れていて、力まかせにする必要はありません。選手は助走路を進み、空に打ち上げられるための力を蓄えてボックスに突っ込みます。
より詳細な内容、コーチバトラーによるイラスト付きの解説は、本書中にて!!
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