もうハムストリングスの肉離れはしたくない・・・効果的な予防法とは?(2-2) ~各筋を選択的に強化するためのエクササイズの選択~
一つ前の記事で「各筋の特徴を考慮して,トレーニングによって各筋および各部位を選択的に強化することは傷害予防やパフォーマンスの向上に重要!」とお話ししました.
では,どのようにして選択的に強化することができるのでしょうか?
【ハムストリングス各筋を選択的に強化するためには?】
各筋を選択的に強化するには大きく2つの方法があります.
それは…
➀ 異なるエクササイズを行う
➁ 同一のエクササイズ中に姿勢を変える
【➀ 異なるエクササイズを行う】
ハムストリングスの強化を狙ったエクササイズには以上の様に大きく分けて
股関節主動の種目 (Hip-dominant) と 膝関節主動の種目 (Knee-dominant) の
2つにわけられます.
Ono et al. (2011) の報告によると,
Hip-dominant exerciseであるStiff-leg deadliftにおいて,筋の活動は半腱様筋よりも大腿二頭筋および半膜様筋で大きいことが明らかになっています.
一方で,Bourne et al. (2016)やOno et al. (2010)によると,
Knee-dominant exerciseであるNordic hamstring やLeg curlにおいて, 筋の活動は半腱様筋で顕著に大きいことが観察されています.
これらの研究は
Hip-dominantでは大腿二頭筋長頭および半膜様筋が,Knee-dominantでは半腱様筋の活動が優先的に高められることを示しています.
これらの報告などを基にして,強化したい筋に応じて運動様式を選択する必要があります.
また,各筋の活動に加えてHegyi et al. (2018) はHip-, Knee-dominant中における
各筋内の部位それぞれの筋活動を検討しました.
その結果,どちらの運動様式でも大腿二頭筋の遠位部が,半腱様筋の中間位の活動が高いことが明らかになりました.
しかし部位ごとの筋活動に関しては一致した見解が得られておらず,さらなる研究が必要とされています.
“どのようにしたら各部位の活動を選択的に高めることができるのか?”
その明確な答えは出ておりませんが,修士の2年間を通して,私が明らかにできればと思います!
【➁ 姿勢を変える】
各筋を選択的に強化するためのもう一つの方法として,”エクササイズ中の姿勢を変える”ことがあげられます.
Hirose & Tsuruike et al. (2016) は,等尺性のLeg curl中のハムストリングスの筋活動は
大腿二頭筋および半膜様筋では膝関節伸展位に近づくにつれて,
半腱様筋では膝関節屈曲位に近づくほど増加したと報告しています.
また,Lynn & Costigan (2009) は,Stiff-leg deadliftにおける股関節の
外旋位で外側ハムストリングス (大腿二頭筋長頭・短頭) が
内旋位で内側ハムストリングス (半腱様筋・半膜様筋) が高い筋活動を示すことを明らかにしました.
さらに,Hegyi et al. (2019) はNordic hamstringを
股関節伸展位で行うと大腿二頭筋と半腱様筋の活動の大きさは同様であるのに対して,
股関節屈曲位で実施すると半腱様筋の活動が特に高いと報告しました.
以上から,ひとつのエクササイズであっても
姿勢 (膝関節・股関節) を変えることで,選択的に各筋を強化できる可能性があります.
【2-2のまとめ】
前回の記事で肉離れは特に大腿二頭筋で多いと述べました.また速い動作を伴うスプリントタイプは大腿二頭筋,筋の過度な伸張を伴うストレッチングタイプは半膜様筋で肉離れが好発するとも説明しました.肉離れの予防やパフォーマンスの向上を達成するために,自分の競技種目の特性や過去に肉離れをした場所を考慮して,強化した筋を狙うための適切なエクササイズや姿勢を選択してみてください.
また,実はこれらのトレーニングをより効果的なものにするコツがいくつかあるんです・・・
気になる人は次の記事でお待ちしております!
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