呼吸について意識したことがありますか?

お久しぶりです。

中京大学大学院の榎将太です。

今回は呼吸についてです。


棒高跳に呼吸は関係あるの?と多くの人が思うと思いますが、実は呼吸は競技力向上、また傷害予防に関連しています。ぜひ最後まで読んでください!!

今回の記事では、先日中京大学にて行われた、阿部さゆりさん(Twitter:@sy_littlelily)の呼吸に関する講演の内容も参考にしています。


そして呼吸の重要性については、先日オーストラリアに訪れた際に、現地のナショナルチームが練習に“ヨガ”を取り入れていたことにも関連しています。それを聞いて「あーなるほど、そこまで重要視しているのか」と思いました。皆様にも、呼吸の重要性を分かっていただきたいです。


【ポイントは腹式呼吸!】

呼吸は1日に約2万6千回していると言われています。

もしもより良い呼吸があれば、どれだけ日常生活や競技に影響を与えるでしょうか?


ヨガは、大きく呼吸をしながら、ゆっくりと体を動かしていきます。

このヨガでの呼吸は、”腹式呼吸”です。

一般的に呼吸には、胸式呼吸と腹式呼吸がありますが、腹式呼吸にはどのような効果があるのでしょうか?


腹式呼吸を行うと、体幹を構成する腹壁筋群(おなか周りの筋;内外腹斜筋、腹横筋、横隔膜、骨盤底筋、多裂筋など)に刺激を与えることができます。特に腹腔を構成する筋の一つである横隔膜を動かす、下げて上げることができれば、腹腔内圧(体幹内部の気圧)を上昇させ、体幹を安定させるきっかけとなります。

(横隔膜や体幹の話になると長くなってしまうので、詳しくはまたの機会に(笑))


☑腹式呼吸を行うことで、お腹周りの筋を活性化させて、体幹が安定するきっかけになる。


【体幹とパフォーマンスの関係】

腹部だけが体幹ではありませんが、その1つである腹部を安定させることでより四肢(手足)を効率的に使うことができます。体幹の安定は動作中の姿勢のコントロール、四肢の筋力発揮や可動域に大きく貢献すると考えられます(1)。また、体幹の安定はパフォーマンスの向上だけでなく、傷害予防にも効果的です。以前紹介したjoint by joint theoryにおいても、腰部は安定性を求められていますね!!


さらに先行研究では、体幹部の安定性が欠如している被験者において、より腰痛が発生していることが報告されています(2-5)。そして、他の研究では、ヨガの呼吸トレーニングを行うことによって慢性腰痛や非特異的な腰痛が軽減することが報告されています(6)。


☑つまり、オーストラリアのナショナルチームは、アクティブレストと体幹安定性の獲得(呼吸を整えること)を目的にヨガを行っていることが考えられます。


【呼吸に注目したトレーニング】

呼吸のトレーニングの1つの例として、”風船”を使ったものがあります。

中京大のtwitterでもやっている画像が掲載されています。

またサッカーの本田圭佑選手がトレーニングしている映像がInstagramに投稿されています。

➀椅子に座り、風船を左手に持って、脇を閉めます。

➁何も考えずに大きく息を吸って、最大限まで吐きます。もう吐けないって思ったところからもう少し吐けます(笑)力を入れて思いっきり吐くのではなく、ゆっくり吐きましょう!!

③そうすると肋骨が下りた状態になるので、その状態をキープしたまま、鼻からゆっくり息を吸いましょう。お腹が膨らむイメージです。肋骨は縦にではなく、横に動きます。

④ここまで来たら口に風船をあてて膨らませます。口に力を入れるのは不正解です。

⑤繰り返し行いますが、風船を指でつまんでしぼむのを防ぐのではなく、舌を喉の上の方に押し当てることで風船がしぼむのを防ぎましょう。


このトレーニングを行っているときに自然とお腹に力が入っていることを感じましょう!!

できるようになってきたら、その状態をキープしつつ、いろいろな姿勢で手や足をゆっくり動かしてみましょう^^


【最後に】

棒高跳のみではなく、スポーツは自分の体を思い通りに動かせること、それにパワーが伴っていることが大切です。

技術練習でうまくできない原因は、案外、体の方にあるかもしれません。それでもなお、跳躍の形だけを追うとケガをしてしまいます。まずはスポーツの基本である”思い通りに体を動かす能力”を最大限引き出しましょう!!

中京大学の後輩(蛭子屋)が姿勢・呼吸についてYouTubeで解説しているので、そちらもご確認ください。

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www.posturalrestoration.com


【参考文献】

(1) Chad E. Smith (2008) Dynamic Trunk Stabilization: A Conceptual Back Injury Prevention Program for Volleyball Athletes. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 38: 703-720.

(2) Hodges PW et al (1996) Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain: a motor control evaluation of transversus abdominis. Spinal, 21:2640-50.

(3) Hodges PW et al (1999) Altered trunk muscle recruitment in people with low back pain with upper limb movement at different speeds. Arch Phys Med Rehabil, 80: 1005-1012.

(4) Hodges PW et al (1999) Preparatory trunk motion accompanies rapid upper limb movement. Exp Brion Res,124: 69-79.

(5) King JC et al (1988) Dynamic postural reflexes: comparison in normal subjects and patients with chronic low back pain. Curr Concepts Rehabil Med, 4: 7-11.

(6) Anderson BE and Bliven KCH (2017) The Use of Breathing Exercises in the Treatment of Chronic, Nonspecific Low Back Pain. J Sport Rehabili,26:452-458.

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