トップ選手は踏切で「下の手が曲がっている」!?
【下の手が「曲がっている」とは?】
「下の手が曲がっている」というのは、踏切からスイング開始までの間に下の手を「突っ張らない」ことを意味しています。
意図的に手を引いて「肘を曲げる」こととは違うニュアンスになります。
本文では、ポールに力をかけつつも「突っ張らない」ことで「下の手が曲がっている」状態を指しています。(2018年10月2日 加筆)
踏切時に多くのトップ選手の下の手が曲がっていることについて「From Beginner to Bubka and Isinbayeva too!」という本の中に”なるほど!”と感じた内容がありましたので、紹介します。
今回紹介する本の内容は、棒高跳界の伝説的コーチであるペトロフコーチの考えを紹介したものです。実際にペトロフコーチの指導している選手や、その考えを受けている選手の多くが、踏切時に下の手が曲がっています。
以前投稿しました『下の手は「突っ張る」のが良い?』では、下の手はポールの進む方向を決める役割をしている!と紹介しました。今回はそれに加えて多くのトップ選手の「下の手が曲がっている」理由と、ここで突っ張ることの弊害を紹介したいと思います。
【ペトロフコーチ的、高く跳ぶためのイロハ】
まずは、ペトロフコーチが示している高く跳ぶために抑えておくべき要素を知る必要があります。
十分に理解するには、詳しく紹介する必要があるのですが・・・。
今回はざっと概要です。
① 適切な動きで、助走速度を獲得する。
② 十分な踏切を行う。
③ 大きな(強い・早い)スイングを行う。
④ ポールが十分に曲がっている時に、ロックバックをむかえる。
⑤ 空中動作は動き続ける。
⑥ いかにポールが曲がっているかではなく進んでいるかを重視する。
【ブブカ選手の言葉】
踏切の動作について、元世界記録保持者のブブカ選手はこう言っています。
”If you perform the wrong take off action the pole will bend soon and doing so you don't recoil energy from the pole.”
「間違った踏切動作により、ポールが早く湾曲しすぎることで、選手はポールの反発するエネルギーを得られなくなります。」
ここでの”間違った踏切動作”は、下の手でポールを突っ張る動作と近い踏切位置を指しています。
【なぜ「下の手が曲がっている」のか?】
では、なぜ「下の手が曲がっている」ように、ここでは推奨されるのでしょうか?
多くの指導の現場で、下の手でポールを押すことで曲げるようにと指摘される場面があります。
それは下の手でポールを押すことで直接的にポールを曲げられるように”見える”からでしょう。
〇下の手が曲がっている理由
「下の手だけがポールを曲げているわけではない」
「大きなスイングに繋げるため」
以前の投稿でも紹介したとおり、ポールを曲げる際に、下の手がの働きはさほど大きくはないとされています。実際に下の手でポールを押さなくてもポールは曲がります。
また大きなスイングを行うためには、ポールを曲げようとして下の手が突っ張っていると、不利になります。踏切後に体が十分に伸展すること、また(スイング方向への)体の回転が抑えられることで、より勢いのある効果的なスイング動作に繋がります。
〇下の手を「突っ張る」ことの弊害
「ポールがすぐに湾曲してしまう」
なぜポールがすぐに湾曲することがいけないのか?
それは、ペトロフコーチのイロハから説明されます。
④ ポールが十分に曲がっている時に、ロックバックをむかえる。
⇒ ポールを進め、ポールが十分に曲がっているタイミング(反発をもらえる時)までに、選手はスイングを行いロックバックのタイミングを迎えることが求められます。
しかし、踏切時からすでにポールが大きく曲がりはじめていると、この反発をもらうことが出来るタイミングが早くにやって来ます。この時、ほとんどの選手のスイング動作では、反発に遅れます。
ポールの反発を押さえるように空中でポールを下に抑え込むように動かす選手もいますね。
今回紹介している本の文中では、この行為は跳躍の動きの流れを止めてしまうとして、できるだけやらないことを推奨しています。
またロックバックが遅れないようにと、踏切後すぐにスイングを行う選手もいると思います。
この行為は、いずれ踏切がおろそかになる可能性があり、ポールが十分に進まなくなる状況を導く可能性があります。
より効率的にポールと体を連動させるためにも、踏切後に「下の手が曲がっている」ことは必要な動きだと考えられ、多くのトップ選手は、そのように跳躍しています。
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