月経周期によるコンディションの変化と上手に向き合おう!
こんにちは!速水です。
今回は、女性特有の月経に関するお話です。女性アスリートはもちろんのこと、指導者の方にも参考にして頂けると幸いです。
月経周期によってコンディションが変わる?
突然ですが、女性アスリートの皆さんは月経周期によって跳躍パフォーマンスに変化を感じた経験はありますか?
新しいポールを使うとき・初めての高さのグリップを握るとき、月経中かそうでないかで心理面の変化はありますか?
実は月経周期と主観的コンディションに関連があると感じているトップアスリートは9割以上います(1)。
月経前・月経中の頭痛や腹痛、腰痛、イライラ、気分の落ち込みなど・・・
タイプは人それぞれですが、月経と上手に向き合いながら競技力向上を目指していくことは一つ大事なポイントと言えるのではないでしょうか?
月経周期とパフォーマンスの関係
では、実際に月経周期は運動パフォーマンスにどのような影響を与えるのでしょうか?
そもそも月経中の軽い運動(ヨガ・ウォーキングなど)は月経痛の改善に効果的であると言われています(2)。
そのため、立ち上がれないほどの痛みで無い限り、運動を行い血流を良くすることは痛みの改善には効果的と言えるでしょう。
では、日頃から強度の高い運動をしているアスリートはどうでしょうか?
最近では、月経周期と運動パフォーマンスに関わる研究は増えてきているものの、共通した見解が得られていないというのが現状です。
垂直ジャンプにおいて、月経痛や特定の月経前症状(Premenstrual Syndrome:以下PMS)の症状がない人は周期の影響がなく、症状がある人の記録は卵胞期に比べて月経期、黄体期に低下した報告もあります(図1;3,4)。
メカニズムについては、まだ解明されていないことが多いですが、プロゲステロンとエストロゲンという卵巣から分泌されるホルモンの変動は、腱や靭帯の伸張性収縮サイクルの作用や筋硬度を変化させる可能性があります(3,6)。このように月経周期は運動パフォーマンスに悪影響を与えているかもしれません。
女性アスリートのコンディショニング3ステップ
いずれにしても、以下の影響を受けやすい選手は、何らかの工夫をして日々のトレーニングに望むことが大切です。
【コンディションに影響を与える婦人科の問題(参考:1)】
① 月経困難症(月経痛で日常生活に支障をきたすこと)
② PMS(月経前に体調不良がみられること)
③ 過多月経(経血量が多いこと)
④ ホルモン変動に伴うコンディションの変化
では、選手としてどのような対策ができるのでしょうか?
今回は、3つのステップに分けてご紹介します。
ステップ1:自分の症状を知ろう!
日頃、練習日誌をつけている方は、トレーニング内容に加えて、月経に関する項目を記録してみましょう(図2;目安:3か月間)。
以下のチェック表を印刷して使用してみてください!
【月経に関する記録】
以下を参考に、月経による出血のある時期、経血量(出血の量)、カラダとココロの変化を記録します。
症状は、後から振り返った時に分かるよう具体的に書きましょう。また、痛み止めを飲んだタイミングも記録することで、次回の月経時の参考になります。
より細かな月経周期を把握するためには、毎朝基礎体温を計測することもおすすめです。
記録は続けることが大切なので、まずはできることから取り組んでみましょう。
ステップ2:自分のタイプを知ろう!
体調変化の記録から、自分はどのタイプなのかを見てみましょう!
日本体育大学の須永美歌子先生が、月経周期によるコンディション変化のチェックリスト(参考:7)を作成されています。
自分のタイプが分からない場合は、こちらの資料P.6を参考にしてみてください。
Aタイプ:月経周期の影響を受けないタイプ
Bタイプ:月経中に痛みや悩みがあるタイプ
Cタイプ:月経前にカラダに悩みがあるタイプ
Dタイプ:月経前にココロに悩みがあるタイプ
Eタイプ:月経前~月経中にかけてココロもカラダも悩みがあるタイプ
※先ほどの図2の例では、Eタイプですね!皆さんはどうですか?
ステップ3:自分に合った対処をしよう!
自分のタイプを把握することで、月経周期によるコンディション変化への対処がしやすくなります。
例えば、「最近モチベーションが下がっている気がする...。」という場合、月経前であれば、「PMSの影響かも!無理に頑張りすぎず、練習では、今日のベストパフォーマンスを出せるようにしよう!」と、自分の状態を客観視しながら練習に望むことができます。
他にも、
食生活に気を付けているのに、体重が1kgも増えた...。
→ PMSの影響で、水分量が増えているのかも。練習はしっかりできているから、その分食事はしっかり食べて様子を見てみよう。
明日の大事なポイント練習が、一番つらい月経2日目だ...。
→ いつも月経中に痛み止めを飲むと、頭痛や腰痛を気にせず練習できるから、明日も飲んでみよう!
このように、自分の変化を予測しながら、コンディションを整えられるようになると、日々の練習がより質の高いものになります。
※月経痛は我慢するものではありません。
「月経痛くらい大丈夫。」と思わず、生活や練習に支障が出る場合は痛み止めを飲むことをおすすめします。
痛み止めを飲んでも月経痛がひどい場合は、子宮内膜症や子宮筋腫が原因となっている場合も考えられます。
その際は、早めに婦人科を受診することをお勧めします。
いかがでしたでしょうか?
まずは、手軽に実践できることから、是非続けてみてください。
月経の症状は個人差がとても大きいため、チームメイトと症状が違って当たり前です。
また、個人内変動があることから、例えばシーズン中と冬期で症状が異なる場合もあります。
何か調子がおかしいなと感じたら、身近な大人に相談することが大切です。
月経周期によるコンディションの変化と上手に向き合い、競技力向上につなげていきましょう!!
【参考文献】
- 能瀬さやか(2018)アスリートのためのハンドブックHealth Management for Female Athletes Ver.3-女性アスリートのための月経対策ハンドブック-東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科
- Zahra M, Farzaneh J, Zahra K (2018) The Effect of aerobic exercise on primary dysmenorrhea: A clinical trial study. J Educ Health Promot. 7: 3.
- Giacomoni M, Bernard T, Gavarry O, Altare S, Falgairette G (2000) Influence of the menstrual cycle phase and menstrual symptoms on maximal anaerobic performance. Med Sci Sports Exerc 32(2): 486-92
- 門馬 怜子,棚橋 嵩一郎,栃木 悠里子,濱崎 愛,高橋 あかり,佐藤 智仁,横田 伍,目崎登,前田 清司(2021)女子陸上競技選手における月経前症候群とジャンプパフォーマンスの関係.体力科学.70(1): 101-108
- 土肥美智子,石井美子,小川将司,奥野真由,高尾美穂,友利杏奈,中村真理子,半谷美夏 (2014) 成長期女性アスリート指導者のためのハンドブック.国立スポーツ科学センター(JISS)
- 岡崎倫江,那須千鶴,吉村和代,曽田武史,津田拓郎,高畑哲郎,矢倉千昭 (2008) 健常若年女性における月経周期中の大腿筋群筋硬度の変動.理学療法科学 23(4):509–513
- 須永美歌子(2018)「女性アスリートの教科書」. 1st Ed., 1-127, 主婦の友社, 東京
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