筋線維のタイプを知る!「第2話:俺は速筋の割合を大きくしたい!」
みなさんこんにちは、川間です。
前回の記事では、「白い筋肉、赤い筋肉?」と題して、筋線維タイプには速筋(Type IIb)、中間筋(Type IIa)、遅筋(Type I)の3種類が存在することを説明しました。また、速筋は大きく素早い力発揮に、遅筋は持久性に特化していることも紹介しました。
今回は第2話ということで、トレーニングと筋線維タイプのお話をしていきます!
(いつも小ボケ多めなので、今回は簡潔にいきます✌)
第2話:俺は速筋の割合を大きくしたい
1⃣トレーニング中における筋線維のタイプの働き
前回の記事で各競技種目によって重要となる筋線維タイプは異なると言いましたが、速筋や遅筋を選択的に動員するにはどうすれば良いのでしょうか・・・?
そのためには、トレーニング負荷がカギを握っています。
一般的に、トレーニング負荷が低い時は遅筋線維が動員され、負荷が増加するにつれて中間筋、そして速筋が徐々に動員されていきます。
このように、トレーニングの負荷が増加するにつれて遅筋、中間筋、速筋と徐々に動員されていくことを「サイズの原理」と言います。
この原理に基づいて、遅筋線維を動員したければ低負荷で、速筋線維の動員を増やしたければ高負荷でトレーニングを実施すると良いかもしれませんね!
2⃣トレーニングの意外な落とし穴
先ほど、速筋線維を動員するには高負荷が必要だと言いましたが・・・
「よぉし!速筋線維の動員を増やすために、重たい負荷でどちゃくそトレーニングするぞぉぉ!」と、なる前に気をつけてほしいことがあります!
「トレーニングをやりすぎてしまうと速筋の割合が減ってしまい、その逆に中間筋の割合が増えてしまう“ことです(Schant et al., 1982)」(榎さんの記事でも紹介されています)
つまり、速筋の割合を増やそうと、どちゃくそトレーニングした結果、“瞬発型“ではなく“持久型“に近づいてしまう可能性があります。
そのため、速筋重視のトレーニングにおいて、トレーニングのやりすぎは良くないのですね・・・
では、速筋線維の割合を増やすための良い方法は存在するのでしょうか?
3⃣速筋線維の割合を増やす方法
速筋線維の割合を増やす方法としては3つ存在します。
➀練習をさぼること
練習をさぼるっ!?とびっくりしますが・・・
実は、長い期間にわたって筋への負荷を与えずにいると(ディトレーニング)、中間筋の割合が減り、速筋の割合が増加すると言われています(Staron et al., 1998)。
「じゃあ、練習さぼったらめっちゃ速筋の割合増えるやんか!」
と考えてしまいますが・・・
筋への負荷が減ると、もちろん筋力の大きな要因である筋の大きさが減少しまうので、結果的に筋力も低下してしまいます。
そのため、練習をさぼることは、 速筋繊維の割合を増やしても、パフォーマンス向上に有効な方法であるとは言えません。
②筋トレで重りを下ろす動作を頑張ってみる
筋の収縮様式には次の3つがあります。
- 等尺性収縮(筋の長さが変わらず力を発揮する)
- 短縮性収縮(筋が短くなりながら力を発揮する)
- 伸張性収縮(筋が伸ばされながら力を発揮する)
等尺性や短縮性収縮ではサイズの原理に基づいて、遅筋線維から速筋線維へと動員されていきます。
その一方で、伸張性収縮だけはサイズの原理の例外として低負荷であっても速筋線維から動員されます!(Nardone et al., 1989)
皆さん、棒高跳のトレーニングの一環としてベンチプレスや懸垂、ロープをすると思いますが、バーベルや身体を地面へ下ろす局面で完全に脱力していませんか?
上げる動作のみでなく下ろす動作も頑張ることで、速筋線維の割合をより効果的に増やしていけるかもしれません!
③素早い動きをしてみる
トレーニングは様々な動作速度で行われますが、素早い動作の時には小さな負荷であっても速筋線維が優先的に動員されていきます(Smith et al., 1980)。
高速度の動作という観点から見ると、クリーンやスナッチなどは“瞬発力”を高めるには良い種目であると言えます。
○まとめ
これまで2話にわたって筋線維タイプのお話をしました。
最後まで読んでくれた皆さんのことが、個人的に大好きです。多分明日良いことあります!
“自分の競技種目に重要な筋線維タイプは何なのか?”
“自分は瞬発型、持久型どちらなのか?”
“どうすれば、目的とした筋線維タイプの割合を増やせるのか?”
今回の記事がそんな疑問のヒントになれば大院生冥利に尽きます。
かつての偉人が言いました。
「自粛明けに店で飲むビールは飛ぶほどうまい」と。
きっと、久しぶりの試合はたまらないと思います。
2021シーズン、全国のPole vaulterの活躍を心より願っております!
〈 参考文献 〉
Schantz, P., Billeter, R., Henriksson, J., & Jansson, E. (1982). Training‐induced increase in myofibrillar ATPase intermediate fibers in human skeletal muscle. Muscle & Nerve: Official Journal of the American Association of Electrodiagnostic Medicine, 5(8), 628-636.
Staron, R. S., Kraemer, W. J., Hikida, R. S., Reed, D. W., Murray, J. D., Campos, G. E., & Gordon, S. E. (1998). Comparison of soleus muscles from rats exposed to microgravity for 10 versus 14 days. Histochemistry and cell biology, 110(1), 73-80.
Nardone, A., Romano, C., & Schieppati, M. (1989). Selective recruitment of high‐threshold human motor units during voluntary isotonic lengthening of active muscles. The Journal of physiology, 409(1), 451-471.
Smith, J. L., Betts, B., Edgerton, V. R., & Zernicke, R. F. (1980). Rapid ankle extension during paw shakes: selective recruitment of fast ankle extensors. Journal of Neurophysiology, 43(3), 612-620.
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