Pole Vault Summit 2019④「Athelete Meet and Greet」

2019年1月18・19日、アメリカのネバダ州リノで開催された棒高跳サミット現地レポートの第4弾!

今回はアメリカ棒高跳界を代表する2名の元選手が担当した『Athlete meet and greet』の様子を紹介したいと思います。

 今年の担当は、Nick Hysongさん(シドニーオリンピック優勝)とJeff Hartwigさん(元アメリカ記録保持者;6m03)でした。現在2人は、Hysongさんは棒高跳コーチ、Hartwigさんは選手のエージェントとして、それぞれ異なる立場から棒高跳に関わる活動をしています。

このセッションは、大学生選手を対象に行われたもので、参加した学生選手から2人に対して様々な質問がされ、2人が自身の経験等をもとにそれぞれの質問に答えていきながら進められました。


【Athlete Meet and Greeet】

by Nick Hysong, Jeff Hartwig


 Q. どんなことを試しても、踏切が近くなってしまします。どんな方法で解決できるでしょうか?

Hysong:

全てのステップがどの距離になるのか把握していました。いつもに対して今日の助走がどれくらい違うのか、それがわかると踏切位置も合うようになります。 

Hartwig:

同じ課題についても、人それぞれ違った方法で解決することが出来ます。まずは友だちや違うコーチたちからいろん解決の方法を聞いてやってみることは良いことです。 

また、踏切位置が近いかどうかは、きっと脳が教えてくれます。例えば、10歩で13ftや14ftから踏み切ることはできるでしょう。ただし、15ft(4m50)はできないと思います。これは皆さんの脳が経験から覚えているのです。だから踏切位置を変えるときも、まずは脳を変えないといけません。まずはグリップの位置を下げて、柔らかいポールでよいので、それでちょうど良い位置を覚えてください。 

ちなみに練習では、毎日「何を目的に」今日練習するのかを考えてください。 またそれを10回連続でできるようになるように練習します。そしていつもより少しだけ、10㎝でいいので高いバーを越えればよいです。


Q. 怪我などはありましたか?また怪我を防ぐために何をしていましたか? 

Hartwig:

僕は怪我で1年間跳べなかったことがあります。いつも練習では、回復するための時間を作ることを心掛けました。 

Hysong:

僕は週に6日、数時間だけが練習時間でした。ほかの時間はビデオを見てイメージを作っていました。また次の練習のための回復に使います。トラックの中だけではなく、外でも棒高跳で高く跳ぶようになるための方法はいくらでもあります。


Q. 競技の世界から引退して、今のモチベーションは何ですか? 

Hartwig:

今はエージェントとして、棒高跳選手が海外で試合をする際のマネジメントを担当しています。18日間で9つの異なる試合を担当したなんてこともあります。僕は今は、選手が棒高跳の試合に集中できるための時間を作ることが仕事です。そしてNickはコーチとして活躍しています。彼が選手を育てて、僕が彼らに選手として試合に出る機会を与える。こうやって2人がやっていることは同じ目標に向かって繋がります。 

そういえばエージェントをしていると、選手が試合会場で緊張したり、不安になる姿を見ます。僕はそういった不安や緊張はすべていいものだと思っています。試合を迎えるまで、多くの時間がハードな練習や上手くいかないことに取り組むような、決して楽しい時間ではないはずです。そういったハードな時間に比べれば、試合はとても楽しく、いいものになるはずです。  


Q. 棒高跳で高く跳ぶために、何を大切にしていますか? 

Hysong:

僕は「どうやったら選手が高く跳べるのかを考えて、見つける手助けをする」ことがコーチの仕事だと思います。具体的には、各動きを遡りながらみていきます。また、Pole Dropと姿勢がうまくできているかをよく見ています。 

Hartwig:

僕は、中間マークを確認することを第一にしていました。

また、高く跳ぶために、硬いポールを使わなくてはいけなくなると思います。この時、皆さん「速く走らなきゃ!」と思っていませんか?でもポールを変えるということは、その前の跳躍で上手く動けているはずです。120%を出そうとする必要はありません。同じようにやるだけです。

ただエージェントとして選手の試合を見るときは、そんなに深く介入することはできませんので、少し提案する程度です。


Q. 練習においては、何を最も重視したらいいですか? 

Hartwig:

この質問の答えは「選手次第!」です。

まずは何が弱点なのかを見つけて見てください。スピード、パワー、メンタル、姿勢などの項目です。 僕は選手時代に助走速度を測られたことがありました。この時に「19ft(約5m80)を跳ぶ選手で君より遅い人を見たことがない!」と言われました。この当時の私は技術のことばかりを考えて練習をしていました。 

Nick:

逆に僕はスピードだけはありました。大学ではリレーメンバーにもなるくらいです。僕はスピードやパワー、短距離走のタイムのことばかり気にして練習していました。その後、技術について時間をかけるようになると記録が伸びるようになりました。 

Hysong:

そしてプランを立てることも大切です。僕は統計学を専攻していて、数字が大好きです。だから毎年、グリップの位置や使用するポール、抜きの高さなどの数値の目標を立てていました。

僕は大学時代にスピードが遅い理由が「地面に力を加えられていない」ことだと言われました。マイケル=ジョンソンのことを調べると、彼は他の選手に比べて接地時間が短いことを知りました。そこでそこからの2年間はHopをたくさん行いました。するとリフティングの記録を変えることなく、スピードを高めることが出来ました。 

Hysong:

あとは毎年の50mや100mのタイムを知っておくべきですね。

それと僕はオフシーズンには毎週木曜日に数種目の簡単なテスト(SLJ、SJ、50mSprint、MB)を行っていました。この記録が向上することが、少なからず自信になりました。どの練習をしても、自分の体力が高まっているのを知っていたので、常にポジティブでいられました。  


Q. 一番ひどかった棒高跳の旅の経験は? 

Hartwig:

この問題が起こらないようにするのが、僕の仕事の一つの課題です。

僕たち2人でブブカの育った街の試合に行った時のことです。その時の飛行機のトランクにはポールが詰めずに、みんなでパイロットの窓から客室にポールを入れましたね。 

Hysong:

僕はヨーロッパの試合に出た時に、試合は良かったんだけど、返ってきたらポールが全部半分に壊されていました。こういう問題はいつでも起こりますね。特にヨーロッパ。 

Hartwig:

あとはSam Kendricksの試合に付き添っていた時。その日はヨーロッパの小さな国で試合でした。試合前日になってもポールが届かず、当日空港に届くのを待っていました。僕はエージェントとしては大会主催者に「Samは跳ぶよ!」と伝えましたが、本人は「ポールが届かなかったら跳ばない」と言っていました。なんと空港にポールが届いたのは、試合開始のタイミング。警察は道路を通行止めにして、パトカーがポールを会場まで運んできました。会場にポールが着いたのは5m40にバーを上げた時。ぎりぎりで間に合ったポールに、会場からは拍手が起こりました。 

試合の日に計画通りに動くのは重要なことですが、こういった事態もたまに起こります。計画を変えることを恐れないことも重要です。


Q. 試合中にコーチがやるべきことは何でしょうか? 

Hartwig:

最近はコーチがタブレットで跳躍を撮って、選手に見せる場面をよく見ます。私は動画を試合中に見せることは、選手にとっては情報が多すぎるなと思っています。

僕の担当している選手たちは基本的に自分自身で試合を進めます。僕は彼らのコーチがいない場合には、選手またはコーチと試合前にいくつかのチェックポイントを共有しています。試合においてはそれくらいで十分です。それと中間マークが合っているのかは必ず確認しましょう。 

Hysong:

あとは選手がどうやったら幸せな気持ちになれるかを考えます。多く試合の場合は上手くいかないものです。1年間に数試合最高な気持ちを味わえれば良いのです。

Boutaka Channel

「Boutaka Channel」は、全てのボウルター(棒高跳競技者)の『もっと高く跳びたい!』を叶えるために活動します! 運営:NPO法人ボウタカ

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