効率的なポールの降ろし方について
棒高跳の技術は”セルゲイ=ブブカ”の登場前と後(1980年代)で変化を見ることが出来ます。
(1984年ロスアンゼルスオリンピック男子棒高跳:ブブカ登場以前)
そのなかでも「ポールの降ろし方」は、長くて軽いグラスファイバーポールを用いるために生み出された大きな技術変化の一つです。
助走から踏切にかけて、競技者はポールを降ろしていきます。この時、グリップを中心に大きな重さを感じます。
この重さを感じることで、特に上半身が力み、踏切前の失速に繋がる例は多くみられます。
ポールがある程度長い競技者ほどポールの重さを感じやすく、なかなか長いポールに対応できない競技者も多いです。
そこで生まれた技術が”ポールドロップ”です。
たった4年間の間に、世界トップ選手の助走中のポール保持角度が変化しました。
(1988年ソウルオリンピック男子棒高跳:ブブカ登場後)
ブブカのコーチであったペトロフの友人は、戦争によって左手を失ってしまいました。
彼は肩にポールを担ぎながら助走を行い、重力に任せてポールを降ろすことで、片手だけでも跳躍できるように工夫しました。
その様子を見たペトロフは、この技術はすべての人にとって有効であると確信し、教え子のブブカに”ポールドロップ”を習得させました。
これまで両手の幅を広く保ち、ポールの角度を低くして走っていた棒高跳競技者に比べて、ポールドロップは身体にかかるポールの重さを軽減させ、長いポールでも力むことなく助走が行え、また自然にポール操作を行えるという利点がありました。
一方でポールを降ろすタイミングを掴むことが必要です。
ポールを降ろすタイミングについては「踏切6歩前」がポイントになります。
踏切6歩前まで、できるだけ垂直にポールを保持し続けましょう。そして、6歩前より重力に任せて自然にポールを降ろすようにすると、踏切2歩前接地時にポールが平行になり、ちょうど踏切でポールの先がボックスにつきます。
このタイミングには個人差があると思いますので、練習をしながら掴んでいきましょう。
ポールドロップの習得方法には、ピット外でのドリル運動とピット内で行うことが出来る”ドリル”がおすすめです。多くのドリルがこれまで生み出されています。
その中でも今回紹介するドリルが「片手ポールドリル」です。ポールドロップの誕生は片手での棒高跳から生まれました。
当時に立ち返ることでポールドロップのコツを掴むことが出来ます。
左手(下の手)でポールを保持しないことにより、自然とポールの重心を意識してポール走を行うことが出来ます。また、ポールが降りるときにも保持できないため、重力に任せたポールドロップが行えます。
このポール操作を実際に跳躍する際には両手で行うだけです。
そのほかのドリルを思いついた皆さんはぜひ紹介してください。
トレーニングは工夫が大切です!
最後に、効率のいいポール降ろしのために必要なこと。
ポールは降ろすだけです。持ってはいけませんよ!
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