十種競技と棒高跳 ② 〜十種競技における棒高跳の重要性〜

こんにちはボウタカチャンネル混成競技担当の村山凌一(@ryo1mh2)です。

今回は「十種競技において棒高跳は重要なのか?」についてです!


【十種競技における重要な種目】


「結局、十種競技って10種目もあるけど、どの種目が一番大事なの?」

「十種競技の棒高跳は重要に決まっているだろう(知らんけど)」

という疑問や考えを持っている人は、ぜひこの記事を読んで十種競技における棒高跳の重要性について、知ってもらえたらと思います。



日本だけでなく、欧米の研究者が、十種競技の総合得点にどの種目が影響を及ぼしているのかを検討しています。


十種競技の真実 ①

棒高跳の記録が高い十種競技選手は、十種競技の記録も高い!!



国内においては、1988年に小林が1986-88年度の十種競技日本20傑選手を対象に、2010年に吉岡らが日本人十種競技者(6341点±539点)を対象に調査を行いました。

すると、棒高跳と十種競技の総合得点との間には高い相関関係が認められる事を示しました。


十種競技の真実 ②

十種競技の中でも特に重要な種目は、「棒高跳」と「円盤投」!!


国際的にみても、Bilic et al.(2015)は 棒高跳、やり投、円盤投および110mHが、Pavric and Idrizovic(2017)は棒高跳、走高跳、円盤投および400mが、十種競技にとって重要な種目であることを報告しています。


十種競技の真実 ③

日本人十種競技選手と、世界トップ選手の大きな差は「棒高跳」である!!



2019年、潮崎らによって、日本のデカスリートは世界トップデカスリートと比較して、十種競技試合での棒高跳のパフォーマンスが有意に低いことが示されました。


十種競技で国際舞台で活躍するためには、棒高跳のパフォーマンスを安定して発揮する必要性がありそうです。


このように十種競技において棒高跳の記録向上は、極めて重要であると考えられています。


【どのように棒高跳のトレーニングを行うのか】


十種競技において棒高跳が重要なことはわかったけれど、「どの程度棒高跳に時間を割いたらいいのかわからない」、「まず何をすればいいのかわからない」という十種競技者は少なくないのではないでしょうか?



十種競技は10種目の異なる種目を1人で行うわけですから、専門的なトレーニングの割合もおのずと少なくなってしまうのは仕方ないことでしょう。

むしろ、1つの種目の専門トレーニングを行い過ぎて、一般的な体力が落ちてしまったり、他の専門トレーニングに時間が割けなかったという反省はよく耳にします。


国際大会で活躍するデカスリートの1年間のトレーニングの割合を調査した研究によれば、1年間(28125分)のうち棒高跳のトレーニングに割いた時間は4065分で、全体の14%にあたることが報告されています(Zwols and Sierksma、2009)。

時期によって多少頻度は異なるでしょうが、「14%=7日に1回」の割合だと考えられます。



つまり、国際大会で活躍する十種競技選手は「週に1回くらい」の頻度で、棒高跳の練習を行っていると想定できます。


日本人を対象にした調査でも、未経験者から、日本トップ選手までおおよそ週に1回トレーニングをしている人が多かったという結果が出ています(村山未発表資料)。


これらのことから、およそ週1回のトレーニングで棒高跳のトレーニングを継続していくことが良いのではないかと考えられます。


「じゃあ、週一回のトレーニング何をすればいいの?」という方は、続きを読んでいきましょう。


【十種競技選手が棒高跳を練習するときのポイント】


まずはポールを曲げずに自分が握っている高さを跳ぶ練習をしっかりとしましょう!


これには賛否両論、様々な指導者の方々の意見があるかと思います。

ここで「竹跳び」を推奨する理由は、安全面と正確な技術の習得の面からです。


過去の先行研究(村木ほか、1993)では、十種競技者の棒高跳に関する事故事例から、十種競技選手は、使い慣れていないポールを無理に曲げて怪我をするケースが多い ことを報告しています。



十種競技者は、技術が未発達でも、身体の発達が進んでいる場合が多く、力や体重でポールを曲げてしまう事が多いことから、技術に見合わないポールを使いがちです。


無理やり曲げるのではなく、まずは、短い歩数で、ポールを曲げずに、身体を操作する過程を踏む(技術に合ったポールを使う)ことが大切であると言えます。

その過程で、少しずつポールが曲がっていくことが良いのではないでしょうか?


もちろん、今回ご紹介したものはあくまで一般的な事例であることから、週に何度も跳躍トレーニングを行ったり、逆に環境がなく頻繁に跳躍練習できない人もいると思います。


トレーニングの種類においても、安全面と基礎技術の習得を優先するというコンセプトのもと、提案したものになります。

コーチとよくトレーニングのコンセプトを確認して、自身で適性なトレーニング頻度や種類を見極めていけると、いいと思います。


安全に楽しく、棒高跳に取り組み、十種競技の得点を伸ばせるといいですね!




参考文献

・小林諭・繁田進・有吉正博・持田尚・佐藤正伸(1998)十種競技の競技記録に関する分析的研究.陸上競技紀要,11:38-43.

・吉岡利貢・中野陽平・森健一・中垣浩平・鍋倉賢治(2010)筋力・筋パワー発揮から見た十種競技者の体力特性.陸上競技研究,82:26-34

・潮崎傑・青山清英・青山亜紀(2019)オリンピックイヤーにおける十種競技世界トップ選手・日本トップ選手の競技パフォーマンス動態に関するトレーニング学的研究.陸上競技研究,116;46-49.

・Zwols Y., and Sierksma G.(2009)Training Optimization for the Decathlon. Operations Research, 57:812-822

・Bilic, M., Smajlovic, N. and Balic, A. (2015) Contribution to discipline decathlon total score results in relation to decathlon age and result-level. Acta Kinesiologica, 9(1): 66-69.

・Pavlic, R. and Idrizovic, K. (2017) Factor analysis world record holders in athletic decathlon. Sports Science, 10(1): 109-116.

・RATKO P., MENSUR V.,  BORKO P.(2020) ATHLETIC DECATHLON: ARE THERE DIFFERENCES BETWEEN THE RESULTS OF DECATHLON RECORD-HOLDERS AND THEIR BEST PERSONAL RESULT? Journal of Physical Education Research, Volume 7, Issue II, June 2020, pp.18-26

・村木征人・阿江通良・繁田進(1993)十種競技における棒高跳での重大事故事例検証による安全指導のためのガイドライン試案.陸上競技研究,13:36-45.

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